コミュニケーションにおけるプロレス論みたいなもの

わりとバラエティーをよく見る。ネタ番組も見ないわけではない。アイドルのバラエティー番組も大好きだ。

「悪口はエンターテイメントであるべきでしょ?」って去年イベントでたまたま並んでいた時に近くの人が会社の人の愚痴を言っていてその時の話でひとりの人が言った言葉だけど、すごくなるほどと思った。

どんな毒舌で相手を罵ったとしても最後に自分がエヘヘって笑っていれば許されるみたいなことは前にどこかで有吉さんも言ってたこと。*1

度がすぎると違ってくるんだけど、お笑いでのいじりと悪口の差もこれであって、いじりにはただボケる以上のユーモアが必要だと思っていて、タレントさんが毒舌キャラをやろうとしてだいたい好感度だけ下がって残念な感じになるのはユーモアが足らないからだと思っている。何かを罵る・貶める言葉こそ品のある言葉かせめて語感のよさがある方がいい。

あともうひとつプロレス的な受身が取れることがとても大事だと思っていて、相手から攻撃を返された時に、それを避けずに受け止めることが出来るかだと思う。まさにプロレスは受けの美学で、相手の攻撃を受けて受けて、ダメージをちゃんと受けて、その上で、自分の技を相手にくらわせる。プロレスで避けていいのはヒールだけだ。ヒールが技を避けて相手をバカにすることでブーイングを受けるのも様式美。常にベビーが応援される訳でもなく、ヒールに対してブーイングじゃなくていいぞいいぞ!という声があがるのもプロレス。

お笑いにおける悪口が成り立つのは基本的にそういう受身がとれるから。ツッコミという役割の人ほど自分もツッコまれる天然さがあることが多い。受身が取れる人はどうしようもないと言われるような人でも生き残っていける。*2受身が取れず番組のなかであっても苛立ちを見せるだけような人はなかなか生き残っていけない。*3苛立ちを笑いに変えられればまだ生き残っていける。*4そういう意味では指原さんはめちゃめちゃプロレスがうまい。受けきったうえでちゃんと返せる。マツコだってめちゃめちゃプロレスがうまい。自分への返しがきたらちゃんと受けきる。下手な攻撃にはつきあわないところもちゃんとヒールだ。

世にいう毒舌キャラもそもそもエンターテイメントとして言葉を選べる人とそうでない人、自分へそれを返された時に受け止めて笑いにできない人とではやっぱり空気の変わり方が違う。

アイドル性ともリンクするけど、それを持ってない人が多いから芸人さんがお金を稼げるんだとは思う。

何でも面白くすれば何でも許されるなんてこともないし、面白いと自負している人が万人から面白いと思われるわけもないけど、でも何のユーモアもないよりある方がいい。

体を張って笑いを取りたいとは思わないけど、死ぬこと以外は全部笑いのネタになると思いたい。相手によっては笑ってくれないよな…と思うことはあまり出さないけど、人生においてはそういうことはたくさんある。

 

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これ去年の年末から書いてる持論なんだけど、最近またちょっと変わってきたというか、持論の展開を変えたのでタイトルもプロレスをベースにした。

コミュニケーションスタンスとして、プロレス型と格闘技型があるのではないかと思い至った。

プロレスは前述の通り受け身が大切で、双方の技の応酬があり、ケガをさせないことが前提。それに対していわゆる総合格闘技はまず先手必勝、相手からダウンを奪うためには相手の攻撃に付き合う美学もないし、秒殺こそ強さであり美しさくらいの感覚というイメージ。*5

プロレスは興行として年間100回以上行われていて、いろんな地方へ行き興行を行うことで団体としてお金を得ているので、対戦相手にケガをさせることは基本的にご法度。もちろんケガすることもあるけど、ケガをさせようとしてはいけない。そういう心持ちでリングに立つ。*6

日本には明確なルールはないけど、アメリカのWWEとかはめちゃめちゃルールが厳しい。

プロレスの歴史の話になると長くなるので置いといて、とりあえずいわゆる総合格闘技にはケガをさせないという発想は多分なくて、それがガチなファイトスタイルとされているんだと思う。

なんでそれが成り立つかというと、興行自体が頻繁じゃないし、団体としての枠でやっていないというのが大きい気がする。団体として興行が成り立たなくなるのは損害だけど、そういう営業スタイルじゃないなら別。もちろんケガ推奨でもないだろうし、大きなイベント前にケガをしたらいろんなアレコレあるんだろうけど。それはきっと個人に請求される。

 

受け身が取れる取れないではなくて、ファイトスタイルとして違うんじゃないかと思った。

受けとめずにガードをする。ガードをしてすかさず攻撃に転じる。

軽い気持ちで仕掛けてきた人に対して、ユーモアゼロのトーンで畳み掛けていく人はきっと格闘技スタイルなんじゃないかなと。

インターネットの世界でもよく見ること。

あぁこの人は格闘技スタイルか…と認識すれば対応がしやすくなるのかな…まぁその場合の対応って何になるかというとリングにあがらないということになるので、状況によっては難しい。格闘技型に対してもプロレスで勝てたら「1番つえぇのはプロレスなんだよ!」*7って言えるけど、継続的に顔を付き合わせる距離感でそれはきびしい。

 

 会社とか組織でのコミュニケーションで考えると、基本的には興行を続けていくためにケガをさせない前提のプロレス的な方がいいと思うんだけどプロレスを強いる権利は誰にもない。でもチームの人の特性を把握してコミュニケーションしていく方が円滑な気がしてるんです、と会社の人に言いたいけどプロレスの話から説明するのが大変なのでブログにまとめて満足するだけ、が現実でした。

 

もちろんプロレスラーにも受け身が下手な人もいるのでプロレスのつもりで受け身じゃなくてガードをしてる人もいるんだろうし、ユーモアのつもりの攻撃がユーモアとして成り立ってないだけのこともある気がするしそもそもユーモアの判断がまぁ絶対的な指標を作れないものだから難しい。新喜劇が好きか嫌いかだって別れるし、プロレスだって新日派とDDT派で相容れないものがあったりするし。これもまた宗教戦争になってしまうんだよなぁ…世界平和って難しい。

 

*1:たぶん怒り新党とか

*2:上島竜兵出川哲朗ライン

*3:フルポンの村上さんとか

*4:ウーマンの村上さんとか三四郎の小宮とかって思ったけどちゃんと受け止めてるんだよね。ちゃんと受け身取ってる

*5:プロレス出身の人のファイトスタイルは多少違うのかもしれないけど

*6:これがヒールが頭よくないと出来ないと言われるところ

*7:cv.中邑真輔